巻第十「羈旅歌」の和歌を一覧にまとめました。
巻第十|羈旅歌の和歌一覧
896 | とふとりのあすかのさとをゝきていなは君かあたりはみえすかもあらん |
897 | いもにこひわかの松はらみわたせはしほひのかたにたつなきわたる |
898 | いさこともはや日のもとへおほとものみつのはま松まちこひぬらん |
899 | あまさかるひなのなかちをこきくれはあかしのとより山としまみゆ |
900 | さゝの葉は(は=のイ)み山もそよにみたるな(な=めイ)りわれはいもおもふわかれきぬれは |
901 | こゝにありてつくしやいつこ白雲のたなひく山のにしにあるらし |
902 | あさきりにぬれにし衣ほさすしてひとりや君か山ちこゆらん |
903 | しなのなるあさまのたけに立けふりをちこち人のみやはとかめね |
904 | するかなるうつの山辺のうつゝにも夢にも人にあはぬなりけり |
905 | 草まくらゆふ風さむくなりにけり衣うつなるやとやからまし |
906 | 白雲のたなひきわたるあしひきの山のかけはしけふやこえなん |
907 | あつまちのさやのなか山さやかにも見えぬ雲ゐによをやつくさん |
908 | 人をなをうらみつへしや宮こ鳥ありやとたにもとふをきかねは |
909 | またしらぬふるさと人はけふまてにこんとたのめしわれをまつらん |
910 | しなかとりゐな野をゆけはありま山ゆふきりたちぬやとはなくして |
911 | 神風のいせのはまおきおりふせ(ふせ=しきイ)てたひねやすらんあらきはまへに |
912 | ふるさとのたひねの夢にみえつるはうらみやすらんまたとゝはねは |
913 | たちなからこよひはあけぬそのはらやふせやといふもかひなかりけり |
914 | 宮こにてこしちのそらをなかめつゝ雲井といひしほとにきにけり |
915 | たひ衣たちゆくなみちとをけれはいさしら雲のほともしられす |
916 | ふねなからこよひはかりはたひねせんしきつの浪に夢はさむとも |
917 | わかことくわれをたつねはあまを舟人もなきさのあとゝこたへよ |
918 | かきくもりゆふたつ浪のあらけれはうきたる舟そしつ心なき |
919 | さよふけてあしのすゑこす浦風にあはれうちそふ浪のをとかな |
920 | たひねして暁かたの鹿のねにいな葉をしなみ秋風そふく |
921 | わきもこかたひねの衣うすきほとよきてふかなんよはの山風 |
922 | あしの葉をかりふくしつの山さとに衣かたしきたひねをそする |
923 | ありしよのたひはたひともあらさりきひとりつゆけき草枕かな |
924 | 山ちにてそをちにけりなしらつゆのあか月をきの木々のしつくに |
925 | 草枕たひねの人は心せよありあけの月もかたふきにけり |
926 | いそなれぬ心そたへぬたひねするあしのまろやにかゝる白浪 |
927 | たひねするあしのまろやのさむけれはつま木こりつむ舟いそく也 |
928 | みやまちにけさやいてつるたひ人のかさしろたへに雪つもりつゝ |
929 | 松かねにお花かりしきよもすからかたしく袖に雪はふりつゝ |
930 | 見し人もとふの浦風をとせぬにつれなくすめる秋のよの月 |
931 | 草枕ほとそへにける宮こいてゝいくよかたひの月にねぬらん |
932 | なつかりのあしのかりねもあはれなりたまえの月のあけかたの空 |
933 | たちかへり又もきて見ん松嶋やをしまのとまや浪にあらすな |
934 | ことゝへよ思おきつのはまちとりなく/\いてしあとの月かけ |
935 | 野辺のつゆ浦わのなみをかこちてもゆくゑもしらぬ袖の月かけ |
936 | もろともにいてしそらこそわすられね宮この山のありあけの月 |
937 | 宮こにて月をあはれとおもひしはかすにもあらぬすさひなりけり |
938 | 月見はと契をきてしふるさとの人もやこよひ袖ぬらすらん |
939 | あけは又こゆへき山のみねなれやそらゆく月のすゑの白雲 |
940 | ふるさとのけふのおもかけさそひこと月にそちきるさよのなか山 |
941 | わすれしとちきりていてしおもかけは見ゆらん物をふるさとの月 |
942 | あつまちのよはのなかめをかたらなん宮この山にかゝる月かけ |
943 | いくよかは月を哀となかめきてなみにおりしくいせのはまおき |
944 | しらさりしやそせの浪をわけすきてかたしく物はいせのはまおき |
945 | 風すさみいせのはまおきわけゆけは衣かりかね浪になくなり |
946 | いそなれて心もとけぬこもまくらあらくなかけそ水のしら浪 |
947 | ゆくすゑはいまいくよとかいはしろのをかのかやねにまくらむすはん |
948 | 松かねのをしまかいそのさよまくらいたくなぬれそあまの袖かは |
949 | かくしてもあかせはいくよすきぬらん山ちの苔のつゆのむしろに |
950 | 白雲のかゝるたひねもならはぬにふかき山路に日はくれにけり |
951 | ゆふ日さすあさちかはらのたひ人はあはれいつくにやとをと(と=かイ)るらん |
952 | いつくにかこよひはやとをかり衣ひもゆふくれのみねのあらしに |
953 | たひ人の袖ふきかへす秋風にゆふひさひしき山のかけはし |
954 | ふるさとにきゝしあらしの声もにすわすれね人をさやの中山 |
955 | しら雲のいくへのみねをこえぬらむなれぬ嵐に袖をまかせて |
956 | けふは又しらぬのはらにゆきくれぬいつれの山か月はいつらむ |
957 | ふるさともあきはゆふへをかたみにてかせのみをくるをのゝしのはら |
958 | いたつらにたつやあさまのゆふけふりさとゝひかぬるをちこちの山 |
959 | みやこをはあまつそらともきかさりきなになかむらん雲のはたてを |
960 | くさまくらゆふへのそらを人とはゝなきてもつけよはつかりのこゑ |
961 | ふしわひぬしのゝをさゝのかりまくらはかなの露やひと夜はかりに |
962 | 岩かねのとこに嵐をかたしきてひとりやねなんさよの中山 |
963 | たれとなきやとの夕を契にてかはるあるしをいく夜とふらむ |
964 | まくらとていつれの草にちきるらんゆくをかきりの野辺の夕暮 |
965 | 道のへの草のあを葉に駒とめてなを故郷をかへりみるかな |
966 | はつせやまゆふこえくれて宿とへはみわのひはらに秋かせそ吹 |
967 | さらぬ(ぬ=てイ)たに秋のたひねはかなしきに松にふくなりとこの山風 |
968 | わすれなむまつとなつけそ中/\にいなはの山のみねのあきかせ |
969 | ちきらねとひと夜はすきぬきよみかた浪にわかるゝあかつきのくも |
970 | ふるさとにたのめし人もすゑの松まつらむ袖に浪やこすらむ |
971 | 日をへつゝ都しのふの浦さひて浪よりほかのおとつれもなし |
972 | さすらふる我身にしあれはきさかたやあまのとま屋にあまたゝひねぬ |
973 | 難波人あし火たく屋に宿かりてすゝろに袖のしほたるゝかな |
974 | 又こえむ人もとまらはあはれしれわか折しける峯の椎柴 |
975 | 道すから富士の煙もわかさりきはるゝまもなき空のけしきに |
976 | 世中はうきふししけししの原や旅にしあれはいも夢にみゆ |
977 | おほつかな都にすまぬみやこ鳥ことゝふ人にいかゝこたへし |
978 | 世中をいとふまてこそかたからめかりのやとりをおしむ君かな |
979 | よをいとふ人としきけはかりの宿に心とむなと思ふはかりそ |
980 | 袖にふけさそな旅ねの夢も見し思ふ方よりかよふうら風 |
981 | 旅ねする夢路はゆるせうつの山関とはきかすもる人もなし |
982 | 都にもいまや衣をうつの山夕霜はらふつたのしたみち |
983 | 袖にしも月かゝれとは契をかす涙はしるやうつの山こえ |
984 | 立田山秋ゆく人の袖を見よ木ゝの梢はしくれさりけり |
985 | さとりゆくまことのみちに入ぬれは恋しかるへきふるさともなし |
986 | 故郷にかへらむことはあすか川わたらぬさきに淵瀬たかふな |
987 | 年たけて又こゆへしと思きや命なりけりさやの中山 |
988 | 思ひをく人の心にしたはれて露わくる袖のかへりぬるかな |
989 | 見るまゝに山風あらくしくるめり都もいまや夜さむなるらむ |