巻第十三「恋歌 三」の和歌を一覧にまとめました。
巻第十三|恋歌 三の和歌一覧
1149 | わすれしのゆくすゑまてはかたけれはけふをかきりのいのちともかな |
1150 | かきりなくむすひをきつる草枕いつこのたひをおもひわすれん |
1151 | おもふにはしのふることそまけにけるあふにしかへはさもあらはあれ |
1152 | 昨日まてあふにしかへはと思しをけふはいのちのおしくもあるかな |
1153 | あふことをけふまつかえのたむけ草いくよしほるゝそてとかはしる |
1154 | こひしさにけふそたつぬるおく山の日かけのつゆに袖はぬれつゝ |
1155 | あふまてのいのちもかなとおもひしはくやしかりけるわか心かな |
1156 | 人心うす花そめのかり衣さてたにあらて(て=はイ)色やかはらん |
1157 | あひみてもかひなかりけりうはたまのはかなき夢におとるうつゝは |
1158 | なか/\のものおもひそめてねぬるよははかなき夢もえやはみえける |
1159 | 夢とても人にかたるなしるといへはたまくらならぬ枕たにせす |
1160 | まくらたにしらねはいはし見しまゝに君かたるなよ春のよの夢 |
1161 | わすれても人にかたるなうたゝねのゆめみてのちもなかゝらしよを |
1162 | つらかりしおほくのとしはわすられてひとよの夢をあはれとそみし |
1163 | けさよりはいとゝおもひをたきましてなけきこりつむあふさかの山 |
1164 | あしのやのしつはたおひのかたむすひ心やすくもうちとくるかな |
1165 | かりそめにふしみのゝへの草枕つゆかゝりきと人にかたるな |
1166 | いかにせんくすのうらふく秋風にした葉のつゆのかくれなき身を |
1167 | あけかたきふたみのうらによるなみのそてのみぬれておきつしま人 |
1168 | あふことのあけぬよなからあけぬれはわれこそかへれ心やはゆく |
1169 | 秋のよのありあけの月のいるまてにやすらひかねてかへりにしかな |
1170 | 心にもあらぬわか身のゆきかへりみちのそらにてきえぬへき哉 |
1171 | はかなくもあけにけるかなあさつゆのおきての後そきえまさりける |
1172 | あさつゆのおきつるそらもおもほえすきえかへりつる心まとひに |
1173 | をきそふるつゆやいかなるつゆならんいまはきえねとおもふわか身を |
1174 | おもひいてゝいまはけぬへしよもすからおきうかりつるきくのうへの露 |
1175 | うはたまのよるの衣をたちなからかへる物とはいまそしりぬる |
1176 | みしかよのゝこりすくなくふけゆけはかねて物うきあかつきの空 |
1177 | あくといへはしつ心なきはるのよの夢とや君をよるのみはみん |
1178 | けさはしもなけきもすらんいたつらに春のよひとよ夢をたにみて |
1179 | 心からしはしとつゝむものからにしきのはねかきつらきけさかな |
1180 | わひつゝも君か心にかなふとてけさもたもとをほしそわつらふ |
1181 | たまくらにかせるたもとのつゆけきはあけぬとつくる涙なりけり |
1182 | しはしまてまた夜はふかしなか月のありあけの月は人まとふ也 |
1183 | おきて見は袖のみぬれていとゝしく草葉の玉のかすやまさらん |
1184 | あけぬれとまたきぬ/\になりやらて人の袖をもぬらしつるかな |
1185 | おもかけのわするましきわかれかななこりを人の月にとゝめて |
1186 | またもこん秋をたのむのかりたにもなきてそかへる春のあけほの |
1187 | たれゆきて君につけましみちしはのつゆもろともにきえなましかは |
1188 | きえかへりあるかなきかのわか身かなうらみてかへるみちしはのつゆ |
1189 | あさほらけおきつるしものきえかへりくれまつほとの袖をみせはや |
1190 | 庭におふるゆふかけ草のしたつゆやくれをまつまの涙なるらん |
1191 | まつよゐにふけゆくかねのこゑきけはあかぬわかれのとりは物かは |
1192 | これも又なかきわかれになりやせんくれをまつへきいのちならねは |
1193 | ありあけはおもひいてあれやよこ雲のたゝよはれつるしのゝめのそら |
1194 | 大井かは井せきの水のわくらはにけふはたのめしくれにやはあらぬ |
1195 | ゆふくれにいのちかけたるかけろふのありやあらすやとふもはかなし |
1196 | あちきなくつらきあらしの声もうしなとゆふくれにまちならひけん |
1197 | たのめすは人はまつちの山なりとねなまし物をいさよひの月 |
1198 | なにゆへと思もいれぬゆふへたにまちいてし物を山のはの月 |
1199 | きくやいかにうはのそらなる風たにもまつにおとするならひありとは |
1200 | 人はこて風のけしきもふけぬるにあはれに雁のをとつれてゆく |
1201 | いかゝふく身にしむ色のかはるかなたのむるくれの松風の声 |
1202 | たのめをく人もなからの山にたにさよふけぬれは松風の声 |
1203 | いまこんとたのめしことをわすれすはこのゆふくれの月やまつらん |
1204 | 君まつとねやへもいらぬまきのとにいたくなふけそ山の葉の月 |
1205 | たのめぬに君くやとまつよゐのまのふけゆかてたゝあけなましかは |
1206 | かへるさの物とや人のなかむらんまつよなからのありあけの月 |
1207 | きみこんといひしよことにすきぬれはたのまぬものゝこひつゝそふる |
1208 | 衣手に山おろしふきてさむき夜を君きまさすはひとりかもねん |
1209 | あふことはこれやかきりのたひならん草の枕も霜かれにけり |
1210 | なれゆくはうき世なれはやすまのあまのしほやき衣まとをなるらん |
1211 | きりふかき秋の野中のわすれ水たえまかちなる比にもあるかな |
1212 | 世のつねの秋風ならはおきの葉にそよとはかりのをとはしてまし |
1213 | あしひきの山のかけ草むすひをきてこひやわたらんあふよしをなみ |
1214 | あつまちにかるてふかやのみたれつゝつかのまもなくこひやわたらん |
1215 | むすひをきしたもとたに見ぬ花すゝきかるともかれしきみしとかすは |
1216 | 霜のうへにけさふる雪のさむけれはかさねて人をつらしとそ思 |
1217 | ひとりふすあれたるやとのとこのうへにあはれいくよのねさめしつらん |
1218 | やましろのよとのわかこもかりにきて袖ぬれぬとはかこたさらなん |
1219 | かけておもふ人もなけれとゆふされはおもかけたえぬ玉かつらかな |
1220 | いつはりをたゝすのもりのゆふたすきかけつゝちかへわれをおもはゝ |
1221 | いかはかりうれしからましもろともにこひらるゝ身もくるしかりせは |
1222 | われはかりつらきをしのふ人やあるといまよにあらは思ひあはせよ |
1223 | たゝたのめたとへは人のいつはりをかさねてこそは又もうらみめ |
1224 | つらしとはおもふ物からふしゝはのしはしもこりぬ心なりけり |
1225 | たのめこしことの葉はかりとゝめをきてあさちかつゆときえなましかは |
1226 | あはれにもたれかはつゆもおもはましきえのこるへきわか身ならねは |
1227 | つらきをもうらみぬわれにならふなようき身をしらぬ人もこそあれ |
1228 | なにかいとふよもなからへしさのみやはうきにたへたるいのちなるへき |
1229 | こひしなんいのちは猶もおしきかなおなしよにあるかひはなけれと |
1230 | あはれとて人の心のなさけあれなかすならぬにはよらぬなけきを |
1231 | 身をしれは人のとかとはおもはぬにうらみかほにもぬるゝ袖かな |
1232 | よしさらはのちのよとたにたのめをけつらさにたへぬ身ともこそなれ |
1233 | たのめをかんたゝさはかりを契にてうきよの中の夢になしてよ |