巻第八「哀傷歌」の和歌を一覧にまとめました。
巻第八|哀傷歌の和歌一覧
| 757 | すえのつゆもとのしつくやよの中のをくれさきたつためしなるらん |
| 758 | あはれなりわか身のはてやあさみとりつゐには野辺のかすみとおもへは |
| 759 | さくらちる春のすゑにはなりにけりあまゝもしらぬなかめせしまに |
| 760 | すみそめのころもうきよの花さかりおりわすれてもおりてけるかな |
| 761 | あかさりし花をや春もこひつらんありし昔を思ひいてつゝ |
| 762 | 花さくらまたさかりにてちりにけんなけきのもとを思こそやれ |
| 763 | 花見んとうへけん人もなきやとのさくらはこその春そさかまし |
| 764 | たれもみな花の宮こにちりはてゝひとりしくるゝ秋の山さと |
| 765 | 花見てはいとゝいゑちそいそかれぬまつらんと思人しなけれは |
| 766 | 春霞かすみしそらのなこりさへけふをかきりのわかれなりけり |
| 767 | たちのほるけふりをたにも見るへきにかすみにまかふ春のあけほの |
| 768 | かたみとて見れはなけきのふかみ草なに中/\のにほひなるらん |
| 769 | あやめくさたれしのへとかうへをきてよもきかもとのつゆときえけん |
| 770 | けふくれとあやめもしらぬたもとかなむかしをこふるねのみかゝりて |
| 771 | あやめ草ひきたかへたるたもとにはむかしをこふるねそかゝりける |
| 772 | さもこそはおなしたもとのいろならめかはらぬねをもかけてける哉 |
| 773 | よそなれとおなし心そかよふへきたれも思ひのひとつならねは |
| 774 | ひとりにもあらぬ思はなき人もたひのそらにやかなしかるらん |
| 775 | をくと見しつゆもありけりはかなくてきえにし人をなにゝたとへん |
| 776 | おもひきやはかなくをきし袖のうへのつゆをかたみにかけん物とは |
| 777 | あさちはらはかなくきえし草のうへのつゆをかたみと思かけきや |
| 778 | 袖にさへ秋のゆふへはしられけりきえしあさちかつゆをかけつゝ |
| 779 | 秋風のつゆのやとりに君をゝきてちりをいてぬることそかなしき |
| 780 | わかれけんなこりの袖もかはかぬにをきやそふらん秋のゆふつゆ |
| 781 | をきそふるつゆとゝもにはきえもせてなみたにのみもうきしつむかな |
| 782 | をみなへしみるに心はなくさまていとゝむかしの秋そこひしき |
| 783 | ねさめする身をふきとおす風のをとをむかしは袖のよそにきゝけん |
| 784 | 袖ぬらす萩のうはゝのつゆはかりむかしわすれぬむしのねそする |
| 785 | さらてたにつゆけきさかのゝへにきてむかしのあとにしほれぬるかな |
| 786 | かなしさは秋のさか野のきり/\すなをふるさとにねをやなくらん |
| 787 | 今はさはうきよのさかのゝへをこそつゆきえはてしあとゝしのはめ |
| 788 | たまゆらのつゆも涙もとゝまらすなき人こふるやとの秋風 |
| 789 | つゆをたにいまはかたみのふちころもあたにも袖をふくあらしかな |
| 790 | 秋ふかきねさめにいかゝおもひいつるはかなく見えし春のよの夢 |
| 791 | 見し夢をわするゝ時はなけれとも秋のねさめはけにそかなしき |
| 792 | なれし秋のふけしよとこはそれなから心のそこの夢そかなしき |
| 793 | くちもせぬその名はかりをとゝめをきてかれ野のすゝきかたみとそみる |
| 794 | ふるさとをこふる涙やひとりゆくともなき山のみちしはのつゆ |
| 795 | うきよにはいまはあらしの山かせにこれやなれゆくはしめなるらん |
| 796 | まれにくる夜はもかなしき松風をたえすやこけのしたにきくらん |
| 797 | ものおもへはいろなき風もなかりけり身にしむ秋の心ならひに |
| 798 | ふるさとをわかれし秋をかそふれはやとせになりぬありあけの月 |
| 799 | いのちあれはことしの秋も月はみつわかれし人にあふよなきかな |
| 800 | けふこすはみてやゝまゝし山さとのもみちも人もつねならぬよに |
| 801 | おもひいつるおりたくしはのゆふけふりむせふもうれし忘かたみに |
| 802 | おもひいつるおりたくしはときくからにたくひしられぬゆふけふりかな |
| 803 | なき人のかたみの雲やしほ(ほ=く)るらんゆふへの雨にいろはみえねと |
| 804 | 神な月しくるゝころもいかなれやそらにすきにし秋の宮人 |
| 805 | てすさひのはかなきあとゝ見しかとも長かたみになりにけるかな |
| 806 | たつねてもあとはかくてもみつくきのゆくゑもしらぬ昔なりけり |
| 807 | いにしへのなきになかるゝ水くきのあとこそ袖のうらによりけれ |
| 808 | ほしもあへぬころものやみにくらされて月ともいはすまとひぬるかな |
| 809 | みなそこにちゝのひかりはうつれともむかしのかけはみえすそ有ける |
| 810 | ものをのみおもひねさめのまくらにはなみたかゝらぬ暁そなき |
| 811 | あふこともいまはなきねの夢ならていつかは君を又はみるへき |
| 812 | うしとてはいてにしいゑをいてぬなりなとふるさとにわか帰けん |
| 813 | はかなしといふにもいとゝなみたのみかゝるこのよをたのみけるかな |
| 814 | ふるさとにゆく人もかなつけやらんしらぬ山ちにひとりまとふと |
| 815 | たまのをの長ためしにひく人もきゆれはつゆにことならぬかな |
| 816 | こひわふときゝにたにきけかねのをとにうちわすらるゝ時のまそなき |
| 817 | たれかよになからへて見んかきとめしあとはきえせぬかたみなれとも |
| 818 | なき人をしのふることもいつまてそけふの哀はあすのわか身を |
| 819 | なき人のあとをたにとてきてみれはあらぬさとにもなりにけるかな |
| 820 | 見し人のけふりになりしゆふへより名そむつましきしほかまのうら |
| 821 | あはれきみいかなる野辺のけふりにてむなしきそらの雲と成けん |
| 822 | おもへきみもえしけふりにまかひなてたちをくれたる春のかすみを |
| 823 | あはれ人けふのいのちをしらませはなにはのあしにちきらさらまし |
| 824 | よもすからむかしのことをみつるかなかたるやうつゝありしよや夢 |
| 825 | うつりけんむかしのかけやのこるとて見るにおもひのますかゝみかな |
| 826 | かきとむることの葉のみそ水くきのなかれてとまるかたみなりける |
| 827 | ありすかはおなしなかれはかはらねと見しやむかしのかけそわすれぬ |
| 828 | かきりなき思のほとの夢のうちはおとろかさしとなけきこしかな |
| 829 | 見し夢にやかてまきれぬわか身こそとはるゝけふもまつかなしけれ |
| 830 | 世中は見しもきゝしもはかなくてむなしきそらのけふりなりけり |
| 831 | いつなけきいつおもふへきことなれはのちのよしらて人のすむ(む=く)らん |
| 832 | みな人のしりかほにしてしらぬかなかならすしぬるならひありとは |
| 833 | きのふみし人はいかにとおとろけとなを長よの夢にそ有ける |
| 834 | よもきふにいつかをくへきつゆの身はけふのゆふくれあすのあけほの |
| 835 | われもいつそあらましかはと見し人をしのふとすれはいとゝそひゆく |
| 836 | たつねきていかにあはれとなかむらんあとなき山の峯のしら雲 |
| 837 | なきあとのおもかけをのみ身にそへてさこそは人のこひしかるらめ |
| 838 | 哀ともこゝろにおもふほとはかりいはれぬへくはとひこそはせめ |
| 839 | つく/\とおもへはかなしいつまてか人のあはれをよそにきくへき |
| 840 | をくれゐてみるそかなしきはかなさをうき身のあとゝなにたのみけむ |
| 841 | そこはかと思つゝけて来てみれはことしのけふも袖はぬれけり |
| 842 | たれもみな涙のあめにせきかねぬそらもいかゝはつれなかるへき |
| 843 | 見し人はよにもなきさのもしほ草かきをくたひに袖そしほるゝ |
| 844 | あらさらんのちしのへとや袖のかをはなたちはなにとゝめをきけん |
| 845 | ありしよにしはしも見てはなかりしを哀とはかりいひてやみぬる |
| 846 | とへかしなかたしくふちの衣手になみたのかゝる秋のねさめを |
| 847 | 君なくてよるかたもなきあをやきのいとゝうきよそ思みたるゝ |
| 848 | いつのまに身を山かつになしはてゝ宮こをたひと思ふなるらん |
| 849 | ひさかたのあめにしほるゝ君ゆへに月日もしらてこひわたるらん |
| 850 | あるはなくなきはかすそふ世中にあはれいつれの日まてなけかん |
| 851 | 白玉かなにそと人のとひし時つゆとこたへてけなまし物を |
| 852 | としふれはかくもありけりすみそめのこはおもふてふそれかあらぬか |
| 853 | なき人をしのひかねては忘草おほかるやとにやとりをそする |
| 854 | くやしくそのちにあはんと契けるけふをかきりといはまし物を |
| 855 | すみそめのそてはそらにもかさなくにしほりもあへすつゆそこほるゝ |
| 856 | くれぬまの身をはおもはて人のよのあはれをしるそかつははかなき |