巻第十七「雑歌 中」の和歌を一覧にまとめました。
巻第十七|雑歌 中の和歌一覧
1588 | 白なみのはま松かえのたむけくさいくよまてにかとしのへぬらん |
1589 | 山しろのいは田のをのゝはゝそはら見つゝや君か山ちこゆらん |
1590 | あしのやのなたのしほやきいとまなみつけのをくしもさゝすきにけり |
1591 | はるゝよのはしかゝはへの蛍かもわかすむかたのあまのたくひか |
1592 | しかのあまのしほやくけふり風をいたみたちはのほらて山にたなひく |
1593 | なにはめの衣ほすとてかりてたくあしひのけふりたゝぬ日そなき |
1594 | としふれはくちこそまされはしはしらむかしなからの名たにかはらて |
1595 | 春の日のなからのはまに舟とめていつれかはしとゝへとこたへぬ |
1596 | くちにけるなからのはしをきてみれはあしのかれ葉に秋風そ吹 |
1597 | おきつ風よはにふくらしなにはかたあか月かけてなみそよすなる |
1598 | すまの浦のなきたるあさはめもはるにかすみにまかふあまのつり舟 |
1599 | 秋風のせきふきこゆるたひことに声うちそふるすまのうら浪 |
1600 | すまの関夢をとおさぬなみのをとをおもひもよらてやとをかりける |
1601 | 人すまぬふわのせきやのいたひさしあれにしのちはたゝ秋の風 |
1602 | あまを舟とまふきかへす浦風にひとりあかしの月をこそ見れ |
1603 | わかのうらを松の葉こしになかむれはこすゑによするあまのつり舟 |
1604 | みつのえのよしのゝ宮は神さひてよはひたけたる浦の松風 |
1605 | いまさらにすみうしとてもいかゝせんなたのしほやのゆふくれの空 |
1606 | おほよとのうらにたつなみかへらすは松のかはらぬいろをみましや |
1607 | まつ人は心ゆくともすみよしのさとにとのみはおもはさらなん |
1608 | すみよしの松はまつともおもほえて君かちとせのかけそこひしき |
1609 | うちよする浪のこゑにてしるきかなふきあけのはまの秋のはつ風 |
1610 | おきつかせ夜さむになれやたこのうらのあまのもしほ火たきまさるらん |
1611 | 見わたせはかすみのうちもかすみけりけふりたなひくしほかまのうら |
1612 | けふとてやいそなつむらんいせしまやいちしのうらのあまのをとめこ |
1613 | すゝか山うきよをよそにふりすてゝいかになりゆくわか身なるらん |
1614 | 世中をこゝろたかくもいとふかなふしのけふりを身のおもひにて |
1615 | 風になひくふしのけふりのそらにきえてゆくゑもしらぬわか思哉 |
1616 | 時しらぬ山はふしのねいつとてかかのこまたらに雪のふるらん |
1617 | 春秋もしらぬときはの山さとはすむ人さへやおもかはりせぬ |
1618 | 花ならてたゝしはのとをさして思こゝろのおくもみよしのゝ山 |
1619 | よしの山やかていてしとおもふ身を花ちりなはと人やまつらん |
1620 | いとひてもなをいとはしきよなりけりよしのゝおくの秋の夕くれ |
1621 | ひとすちになれなはさてもすきのいほによな/\かはる風のをとかな |
1622 | たれかはとおもひたえてもまつにのみをとつれてゆく風はうらめし |
1623 | 山さとはよのうきよりはすみわひぬことのほかなる峯の嵐に |
1624 | 滝のをと松のあらしもなれぬれはうちぬるほとの夢はみせけり |
1625 | ことしけきよをのかれにしみ山へにあらしの風も心してふけ |
1626 | おく山のこけの衣にくらへ見よいつれかつゆのをきまさるとも |
1627 | 白つゆのあしたゆふへにおく山のこけの衣は風もさはらす |
1628 | 世中をそむきにとてはこしかともなをうきことはおほはらのさと |
1629 | 身をはかつをしほの山とおもひつゝいかにさためて人のいりけん |
1630 | こけのいほりさしてきつれと君まさてかへるみ山のみちのつゆけさ |
1631 | あれはてゝ風もさはらぬこけのいほにわれはなくともつゆはもりけん |
1632 | 山ふかくさこそ心はかよふともすまてあはれをしらんものかは |
1633 | やまかけにすまぬこゝろはいかなれやおしまれている月もあるよに |
1634 | たちいてゝつま木おりこしかたをかのふかき山ちとなりにけるかな |
1635 | おく山のをとろかしたもふみわけてみちあるよそと人にしらせん |
1636 | なからへて猶きみかよを松山のまつとせしまにとしそへにける |
1637 | いまはとてつま木こるへきやとの松ちよをは君と猶いのる哉 |
1638 | われなからおもふかものをとはかりに袖にしくるゝ庭の松風 |
1639 | 世をそむくところとかきくおく山はものおもひにそいるへかりける |
1640 | 世をそむくかたはいつくにありぬへしおほはら山はすみよかりきや |
1641 | おもふことおほはら山のすみかまはいとゝなけきのかすをこそつめ |
1642 | たれすみて哀しるらん山さとの雨ふりすさむゆふくれの空 |
1643 | しほりせてなを山ふかくわけいらんうきこときかぬ所ありやと |
1644 | かさしおるみわのしけ山かきわけてあはれとそおもふすきたてるかと |
1645 | いつとなきをくらの山のかけをみてくれぬと人のいそくなる哉 |
1646 | さかの山ちよのふるみちあとゝめてまたつゆわくるもち月のこま |
1647 | さほかはのなかれひさしき身なれともうきせにあひてしつみぬる哉 |
1648 | かゝるせもありけるものをうちかはのたえぬはかりもなけきけるかな |
1649 | むかしよりたえせぬ河のすゑなれはよとむはかりをなになけくらん |
1650 | ものゝふのやそ氏かはのあしろ木にいさよふ浪のゆくゑしらすも |
1651 | わかよをはけふかあすかとまつかひのなみたの瀧といつれたかけん |
1652 | みなかみのそらにみゆるは白雲のたつにまかへるぬのひきの瀧 |
1653 | ひさかたのあまつをとめか夏衣くも井にさらすぬのひきのたき |
1654 | むかしきくあまのかはらをたつねきてあとなきみつをなかむはかりそ |
1655 | あまのかはかよふうきゝにことゝはんもみちのはしはちるやちらすや |
1656 | ま木のいたもこけむすはかりなりにけりいくよへぬらんせたのなかはし |
1657 | さためなき名にはたてれとあすかゝははやくわたりしせにこそ有けれ |
1658 | 山さとにひとりなかめておもふかなよにすむ人の心つよさを |
1659 | やまさとにうきよいとはんともゝかなくやしくすきし昔かたらん |
1660 | 山さとは人こさせしとおもはねととはるゝことそうとくなりゆく |
1661 | 草のいほをいとひても又いかゝせんつゆのいのちのかゝるかきりは |
1662 | わくらはになとかは人のとはさらんをとなし河にすむ身なりとも |
1663 | 世をそむく山のみなみの松風にこけのころもやよさむなるらん |
1664 | いつかわれこけのたもとにつゆをきてしらぬ山ちの月をみるへき |
1665 | いまはわれ松のはしらのすきのいほにとつへき物をこけふかき袖 |
1666 | しきみつむ山ちのつゆにぬれにけり暁おきのすみ染のそて |
1667 | わすれしの人たにとはぬ山ちかな桜は雪にふりかはれとも |
1668 | かけやとすつゆのみしけくなりはてゝ草にやつるゝふるさとの月 |
1669 | けふりたえてやく人もなきすみかまのあとのなけきをたれかこるらん |
1670 | やそちあまりにしのむかへをまちかねてすみあらしたるしはのいほりそ |
1671 | 山さとにとひくる人のことくさはこのすまゐこそうらやましけれ |
1672 | おのゝえのくちしむかしはとをけれとありしにもあらぬよをもふる哉 |
1673 | いかにせんしつかそのふのおくのたけかきこもるとも世中そかし |
1674 | あけくれはむかしをのみそしのふくさ葉すゑのつゆに袖ぬらしつゝ |
1675 | をかの辺のさとのあるしをたつぬれは人はこたへす山をろしの風 |
1676 | ふるはたのそはのたつきにゐるはとのともよふ声のすこきゆふくれ |
1677 | 山かつのかたをかゝけてしむる野のさかひにたてる玉のを柳 |
1678 | しけきのをいくひとむらにわけなしてさらにむかしをしのひかへさん |
1679 | むかし見し庭のこ松にとしふりて嵐のをとをこすゑにそきく |
1680 | すみなれしわかふるさとはこのころやあさちかはらにうつらなくらん |
1681 | ふるさとはあさちかすゑになりはてゝ月にのこれる人のおもかけ |
1682 | これや見しむかしすみけんあとならんよもきかつゆに月のかゝれる |
1683 | かけにとてたちかくるれはから衣ぬれぬ雨ふる松のこゑかな |
1684 | いそのかみふりにし人をたつぬれはあれたるやとにすみれつみけり |
1685 | いにしへをおもひやりてそこひわたるあれたるやとのこけのいしはし |
1686 | わくらはにとはれし人もむかしにてそれより庭のあとはたえにき |
1687 | なけきこる身は山なからすくせかしうきよの中になにかへるらん |
1688 | 秋されはかり人こゆるたつた山たちてもゐてもゝのをしそおもふ |
1689 | あさくらやきのまろとのにわかをれはなのりをしつゝゆくはたかこそ |